サプリを信じる前に知るべき5つのこと、ずさんな表示の実態も

ソース: National Geographic / 画像: HEINER MÜLLER-ELSNER, LAIF/REDUX/著者: AMY MCKEEVER/訳=米井香織

サプリメントは2000億ドル(約30兆円)規模の産業になると予測されているが、サプリメントには効果ばかりがあるわけではなく、有害になりうるものさえある。(PHOTOGRAPH BY HEINER MÜLLER-ELSNER, LAIF/REDUX)

 もし錠剤を1錠飲むだけで、突然、エネルギーがみなぎり、肌がきれいになり、心臓が健康になるとしたら? ドラッグストアのサプリメント売り場を通るたび、このような期待が手招きする。売り場には魚油のカプセルや、容器入りのコラーゲンパウダー、マグネシウムのチュアブル錠、そして、ありとあらゆるビタミン剤が並ぶ。

 実に魅力的だ。世界のサプリメント産業が2025年までに2000億ドル(約30兆円)規模に達すると予測されているのも不思議ではない。

 しかし、これらのサプリメントにどれくらい効果があるのか、コストに見合うのかについて、筆者はいつもかなりの疑念を持っている。そこで、サプリメントに関してこれまでナショナル ジオグラフィックが報じてきた内容から得た洞察を紹介したい。ただし、健康について意思決定する際は、まず医師に相談してほしい。

1. サプリメントは厳しく規制されていない

 サプリメントに関するナショジオの記事のほぼすべてが、ある重要なポイントを指摘している。米食品医薬品局(FDA)はサプリメントを医薬品と同じようには規制していないという事実だ。つまり、企業はサプリメントを市販する前にFDAの承認を得る必要がない(編注:日本でもサプリメントは薬機法上の規制の対象外であり、原則として一般の食品と同様の扱い)。

 そのため、サプリメントには誤解を招くような表示が付いていることがある。米ニューハンプシャー州栄養学会の次期会長である登録栄養士のジェン・メサー氏は、米国で行われ、2023年7月に医学誌「JAMA Network Open」に発表された研究について教えてくれた。

 この研究では、スポーツに有益な5つの成分のいずれかを含むと表示されているサプリメント57製品を分析したところ、84%の製品は成分量が表示と異なり、40%は表示されている成分が含まれていなかった。さらに、12%は「FDAが禁止している成分を表示なしで含んでいました」と氏は言う。

 また、厳しい規制が存在しないことは、企業は製品に表示通りの効果がある証拠をFDAに示す必要がないことも意味する。米クラークソン大学の生物学教授デイビッド・ヒベット氏は、チャーガ(カバノアナタケ)やヤマブシタケのようなキノコのサプリメント市場が活況に沸いている現状を「西部開拓時代」に例えている。

「エビデンスはまだ非常に限られており、私の考えでは、これらの製品を栄養補助食品として売り込む正当な理由にはなりません」

2. 誰もが摂取すべきものではない、たとえマルチビタミンでも

 筆者は、マルチビタミンを毎日摂取することは健康的な習慣の典型だと思って育ったが、すべての人に当てはまることではないようだ。マルチビタミンを毎日摂取したければ、まず医師に相談すべきだ。

 理由はいくつかある。まず、マルチビタミンは抗生物質や抗凝固薬(血液をサラサラにして血栓を防ぐ薬)など、特定の薬の邪魔をする可能性がある。また、肝臓や腎臓に疾患のある人は、マルチビタミンに含まれる高濃度の栄養素を効率的に処理できない恐れがある。最後に、たとえ体に良いものでも過剰摂取の可能性はある(詳細は後述)。

 結局のところ、何事も個人のニーズ次第ということだ。

3. すべてのビタミンが同じように体の中で分解されるわけではない

 ただし、自分の健康状態のほかにも注意すべきことがある。ビタミンによって体内での吸収の仕組みが異なる点だ。そのため、サプリメントで摂取すべきかどうかの判断も違ってくる。

 専門家は、特に脂溶性、つまり油に溶けやすいビタミンAとEに注意するよう警告している。水溶性、つまり水に溶けやすいビタミンBやCなどと異なり、体内ですぐに分解して代謝されるのではなく、肝臓や脂肪細胞にたまりやすい。そのため、多めに摂取すると、実際に害を及ぼすことがある。

4. 過剰摂取の可能性もある

 前述の通り、ビタミンは毒にもなりうる。つまり、取り過ぎると、助けになるどころか、害を及ぼし始めるということだ。

 例えば、ビタミンAの場合、成人の1日の上限摂取量である2700マイクログラム(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」)を超えて取り続けると、関節痛、肝障害、先天性欠損などを引き起こす可能性がある。

 また、ビタミンEの大量摂取は血が止まりにくくなったり、出血の原因になったりする。さらに、ビタミンDの過剰摂取は吐き気、筋力低下、錯乱、嘔吐(おうと)、脱水を引き起こす恐れがある。

5. 栄養素は食べ物から取る方がいい

 コラーゲンやビタミンCなど、多くの栄養素は一般的な食品に豊富に含まれている。そして、食物繊維が豊富な野菜や果物など、加工されていない食品を丸ごと食べた方がビタミンやミネラル、腸内環境に有益な成分を効率的に取れる場合が多いと、米クリーブランド・クリニックの栄養士ゲイル・クレッシー氏は語っている。

「プロバイオティクス(腸内細菌のバランスを改善して健康に良い影響を与える生きた微生物)やプロバイオティクスサプリメントを摂取しても、悪い食生活が直るわけではありません」

文=AMY MCKEEVER/訳=米井香織