「野菜の代わりに果物」それ、危険かも!?管理栄養士が教える、果物だけでは補えない栄養とは


(写真:Adobe Stock)

 

ソース/ yogajournal.jp

文/ NS Labo(栄養サポート研究所)

『野菜は苦手だけれど果物なら毎日食べている』『つい手軽な果物ばかり食べてしまいがち…』という人は多いのではないでしょうか。果物には野菜と同じようにビタミンやミネラルが豊富なイメージはありますが、実際に果物だけでも野菜の栄養が補えるのか、管理栄養士が解説します。

果物から摂れる栄養素

果物は、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。ミカンやキウイはビタミンCが豊富で、抗酸化作用があり、免疫機能の強化に役立つといわれています。バナナや柿にはカリウムが豊富で、体内の余分なナトリウムを排出したり、高血圧の予防に効果が期待できます。果物に含まれてる食物繊維には、整腸作用や血糖値の上昇を穏やかにしたり、体内のコレステロールの吸収を抑える働きがあるといわれています。

野菜から摂れる栄養素

野菜は、果物と同様にビタミンミネラル、食物繊維が豊富です。人参やほうれん草には体内でビタミンAに変換されるβ‐カロテンが豊富で、皮膚や粘膜を健康に保つ働きがあります。また、ブロッコリーやピーマン、パプリカ、じゃがいもにはビタミンCやカリウムが豊富です。エネルギー代謝を助けたり、疲労回復効果のあるビタミンB群は、ブロッコリー、アスパラガス、ほうれん草、モロヘイヤ、ニラなどに多いです。ごぼうやレンコンなどの根菜類、さつま芋や里芋などの芋類には、腸内環境を整える食物繊維が豊富です。

果物に足りない栄養素とは?

果物と野菜、どちらにも豊富に含まれているのはカリウムとビタミンCです。果物だけでは不足しがちなのは

ビタミンA

抗酸化作用の強いビタミンAは、柿やスイカなどにも含まれてはいますが、野菜と同量のビタミンAを摂取すると果糖の摂りすぎとなり、肥満の原因になってしまいます。

ビタミンB群

糖質や脂質の代謝に不可欠なビタミンですが、果物にはあまり含まれていません。不足してしまうとエネルギー産生が低下し、疲労感や倦怠感などの他、口内炎や肌荒れ、貧血、イライラといった症状が現れることが考えられます。

不溶性食物繊維

ごぼうやさつま芋などの芋類に多く含まれている不溶性食物繊維ですが、果物は不溶性ではなく水溶性食物繊維が豊富です。果物だけでは不溶性食物繊維が不足していまい、便のカサを増やして大腸を刺激する効果が少ないので、便秘気味の人は果物だけでは改善しない場合があります。

野菜と果物、どのくらい食べるべき?

これらのことをふまえると、〝果物だけで野菜の栄養を補える〟ということではないことがわかりますね。では、果物と野菜、一日にどのくらい食べれば良いかといいますと

【野菜 1日350g】【果物 1日200g】

これは、健康日本21(第3次)で定められている目標値です。実際に野菜を350g食べるには、1日に小鉢5皿分の野菜のおかずを食べる必要があります。朝に70gの野菜おかずを1品、昼、夜に2品ずつというイメージです。毎食両手いっぱいの野菜の量と考えてもわかりやすいです。生野菜のサラダだけでは摂取を増やすのは難しいので、電子レンジや茹で調理でカサを減らしたり、具沢山の汁物も活用すると良いでしょう。果物は、食べられる部分(可食部)で200gです。りんごや梨、柿なら1個、みかんやキウイなら2個、バナナなら1~2本です。やはり果物の食べ過ぎは果糖過多になりやすく、中性脂肪の増加や血糖値の急激な上昇にも繋がりやすくなるため、食べる量には注意していく事が大切です。

《参考文献》
果物1日200gのすすめ/厚生労働省
野菜1日350gで健康増進/厚生労働省
体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!/塩野崎淳子
《ライター》やなぎかおり
特別養護老人ホームにて介護食の大量調理や栄養士業務を経験。働きながら管理栄養士の資格を取得。その後、中学校給食センターにて献立作成、給食管理、食育授業に携わる。結婚、出産を経てヘルスケア栄養指導士の資格を取得。子育てをしながら栄養に関する記事執筆を行っている。