健康長寿な人はあまり口にしない…世界最高権威の医学誌が警鐘「年1500万人の命を縮める」茶色の食べ物の正体

写真=iStock.com/Yuuji

 

Source : president online Written by 谷本 哲也

医師が伝授「ランチから健康食に置き換える簡単な方法」


「日常食」が原因で糖尿病や高血圧など生活習慣病になり毎年約1500万人が全世界で亡くなっている。医師の谷本哲也さんは「近頃、出版された医学専門誌『ランセット』は年間の死亡者約6000万人のうち、約27%はそうした間違った食習慣の影響が大きいと警鐘を鳴らしている」という――。

茶色っぽいメニューやコンビニで買える食べ物ばかりだと…

コンビニで買った唐揚げ弁当。ファストフード店のハンバーガーセット。ランチタイムの牛丼大盛り。忙しい毎日、こうした全面“茶色系”のメニューでお腹を満たしていませんか?

実は、こうした現代人が「普通」に口にしている加工食品や赤身肉の食べ過ぎが人間の寿命を少しずつ削り、地球環境にも悪影響を及ぼしているかもしれません。

世界全体の年間の死亡者数は約6000万人前後とされています。2025年10月、医学界で最も権威ある専門誌『ランセット』に掲載された報告書は衝撃的な事実を明らかにしました。

不健康な食生活が原因で糖尿病や高血圧など防げたはずの生活習慣病になることで、推計毎年約1500万人(死亡者数の27%程度)が亡くなっているというのです

命を縮める食事の正体

では、具体的にどんな食事が危険なのでしょうか。医師として日々患者を診ている立場から、特に注意すべき食品をご紹介しましょう。

まず真っ先に注意を促したいのが、加工肉です。ハム、ソーセージ、ベーコンといった食品について、WHO(世界保健機関)は「発がん性あり」と認定しています。毎日50g(ソーセージ1本またはベーコン2枚程度)の加工肉を食べ続けると、大腸がんのリスクが18%上昇することが分かっています。朝食のハムエッグ、お弁当のウインナー、ラーメンのチャーシュー。こうした定番の食事の積み重ねが、がんのリスクを高めているのです。

同様に問題なのが超加工食品です。カップ麺、菓子パン、スナック菓子など、工場で大量生産された添加物だらけの食品を指します。約10万人を長期間追跡した結果、超加工食品の摂取量が多い人では、すべての死因を合わせた死亡リスクが約4%高く、特にがんや心臓病以外の原因で亡くなる人が約9%多かったという結果でした。これらの食品は血糖値を急上昇させ、満腹感を得にくいため過食につながり、糖尿病や肥満のリスクを高めます。

赤身肉の過剰摂取も深刻です。牛肉・豚肉などの赤身肉を1日100g多く食べる人は、心臓病になるリスクが約11%高く、ハムやソーセージなどの加工肉を1日50g多く食べる人は、心臓病のリスクが約26%高いことが分かりました。さらに、赤身肉や加工肉を多く食べる人では糖尿病の発症率も有意に高い傾向が見られ、特に欧米型の食生活ではこの影響が強いと報告されています。焼肉、ステーキ、とんかつ。間違いなく、みんなおいしいです。しかし、頻繁に食べると確実に寿命を縮めます。

精製された白い炭水化物も要注意です。新米が店頭に並んでいますが、白米を1日3杯以上食べる人は、糖尿病のリスクが27%高まるという研究結果があります。精製過程で食物繊維やビタミンが失われ、血糖値が急上昇しやすくなるためです。この米だけでなく、パン、うどんを含め白い炭水化物は日本人が日常的に食べているものばかりです。

さらに日本人が特に気をつけなければならないのが塩分です。日本人の平均塩分摂取量は1日10g前後ですが、世界保健機関の推奨量は5g未満。塩分の取りすぎは高血圧、脳卒中、胃がんのリスクを高めます。漬物、味噌汁、醤油など、特に日本の伝統食は塩分が多く、注意が必要です。

なぜこれらの食事が寿命を縮めるのか

上記に挙げた食品に共通するのは、慢性炎症を引き起こし、血管を傷つけ、がん細胞の増殖を促進するという点です。

・加工肉に含まれる亜硝酸塩は体内で発がん性物質に変わります。

・超加工食品の添加物や精製された糖質は、血糖値の乱高下を繰り返し、インスリン抵抗性を引き起こして糖尿病につながります。

・赤身肉の過剰摂取は腸内の悪玉菌を増やし、動脈硬化を進行させます。

こうした食事が常態化すると、糖尿病、心臓病、脳卒中、がんといった生活習慣病のリスクが高まります。実際、アメリカで行われた大規模研究で10万人以上を30年以上追跡調査すると、食事が寿命と健康寿命の両方に大きく影響することを示しました。

一方、同調査では果物や野菜、全粒穀物、豆類などを中心に食べた人は死亡率が2割程度低下、70歳まで大病なく心身ともに健康でいられる確率が5割以上も高いことが判明しています。つまり、毎日の食事が寿命も健康も左右するという結論が示されています。

健康長寿の人が実践している食習慣

私は医師として、多くの健康長寿の方々を診てきました。高齢になっても元気に暮らしている方々には、共通した食習慣があります。

まず、健康長寿の方は朝食をしっかり食べる傾向にあります。特に、納豆や豆腐などの大豆製品、野菜たっぷりの味噌汁、玄米や雑穀米を組み合わせた和食を好む方が多いです。朝からしっかり栄養を摂ることで、1日のエネルギー代謝が整い、昼食や夕食での過食を防げるとされ、研究でも効果が示されています。

次に印象的なのが、「もう少し食べられるかな」というところで箸を置く習慣です。この腹八分目が徹底して身についています。いつも満腹まで食べる人は老化を早める可能性があるのです。カロリー制限の効果は近年研究が進んでおり、私自身も16時間絶食する間欠的ファスティングを生活に取り入れています。

また、「ベジファースト」を自然に実践している方が多いのも特徴です。野菜を先に食べることで血糖値の急上昇を防ぎ、満腹感も得やすくなります。

健康長寿の方は、肉より魚を好む方が圧倒的に多いことも見逃せません。週3回以上は魚を食べている方がほとんどです。特に青魚であるサバ、イワシ、サンマに含まれるオメガ3脂肪酸は、心臓病や認知症の予防に効果的とされています。

間食の選び方も特徴的です。スナック菓子ではなく、りんご、みかん、バナナなどの果物や、アーモンド、くるみなどのナッツを間食にしています。小腹が空いたらナッツをひとつまみという方が多いのです。

そして、一人で黙々と食べるのではなく、家族や友人と会話しながら食事を楽しむという、孤食を避ける習慣も重要です。食事のスピードがゆっくりになり、消化にも良い影響があります。何より、食事の時間が楽しいものになることが、心の健康にもつながっています。

最後に、食材を「買いすぎない、作りすぎない、残さない」という工夫も共通しています。冷蔵庫の中身を確認してから買い物に行く、旬の食材を選ぶ、残り物を上手にアレンジする。こうした習慣が、自然と健康的な食生活につながっているのです。

今日から変えられる具体的なアクション

では、私たちは何から始めればいいのでしょうか。無理なく続けられる、具体的な方法をご紹介します。

まず、ランチの置き換えから始めましょう。唐揚げ弁当を焼き魚定食に変える。牛丼大盛りを牛丼並盛りと野菜サラダに、カップ麺をおにぎりと野菜スープに変える。これだけでも、塩分、脂質、カロリーを大幅に減らせます。

次に、白米に「ちょい足し」してみてください。白米に玄米や雑穀を混ぜるだけです。最初は白米7に対して玄米3から始めて、徐々に比率を変えていきましょう。食物繊維が増え、血糖値の上昇が緩やかになります。

週に1回、肉を食べない日を設ける「ミートフリーマンデー」も取り入れやすい習慣です。元ビートルズのポール・マッカートニー氏も推奨しているこの取り組みは意外と簡単です。月曜日の夕食は魚の塩焼きに納豆と野菜の煮物、火曜日のランチは野菜たっぷりのパスタ。これだけで、環境にも健康にもプラスになります。

買い物前の冷蔵庫チェックも効果的です。スーパーなどに行くと私もついつい買い過ぎてしまいますが、買い物に行く前に、スマホで冷蔵庫の中を撮影する。これだけで食品ロスが激減し、無駄な買い物も減ります。結果的に、新鮮な食材を使い切る習慣が身につきます。

最後に、調味料を変えてみてください。醤油を減塩醤油に変える。塩の代わりに出汁や香味野菜(しょうが、にんにく、ネギ)で味付けする。マヨネーズやドレッシングをオリーブオイルとレモン汁に変える。最初は物足りなく感じても、薄味にだんだんと慣れておいしいと感じるようになるでしょう。

食卓に並ぶ一皿が未来を変える

食事を変えるには、いきなり大きなハードルを越えようとせず、小さなステップを設定して、それをクリアするプロセスを繰り返すといいです。

最初は、ランチで茶色い揚げ物を一品減らして、緑黄色のサラダを増やす。夕食で白米を少し減らして玄米を混ぜてみる。週に1回、肉を使わない日を設ける。こうした小さな積み重ねが、10年後、20年後のあなたの健康を大きく変えます。

冒頭で紹介した世界で最も権威のある医学誌ランセットは、「今の食生活を続けていては、私たちの健康も、地球環境も、もはや持続できない」と警鐘を鳴らしています。

でも、希望もあります。世界中で食習慣を変えられれば、毎年約1500万人の早死にを防ぐことができる。健康的な食事がすべての人に届き、地球の限界の中で生産され、公正に分配される世界。一朝一夕にはいかないでしょうが、決して不可能な話ではありません。

今この瞬間から始めることができる、今日、あなたが選ぶ食事。それが、自分の命だけでなく、地球の明日を守る一歩にもなるのです。