エンドウ豆とレンズ豆は隠れたスーパー食材、抗酸化物質が豊富

タンパク質もたっぷり、血糖値の改善も、水で戻す必要がなく料理しやすい

インド、カルナータカ州マイソールの市場では、さまざまな種類のレンズ豆が売られている。インド料理ではレンズ豆は定番の食材だ。(PHOTOGRAPH BY MATTHIEU PALEY, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

 

Source :ナショナル ジオグラフィックとは / 2025/06/04

 近年、豆類は栄養豊富な食材として注目を集めている。しかし、実際に食べられている豆の種類には偏りがある。インドや中東などでは、さまざまな豆類が主要な食ベ物となっているが、米国はそうではなく、料理にする場合でもビーン類(インゲン豆など)ばかりが使われる傾向にある。日本でも豆類の摂取量は大豆とその加工品が大半を占めている。

 一部の専門家は、エンドウ豆やレンズ豆にもスポットライトが当てられるべきだと主張する。それらもタンパク質、食物繊維、抗酸化物質を豊富に含み、高い栄養価を誇っている。

 2022年にイタリア、カメリーノ大学の研究者らが学術誌「Pharmaceuticals」に発表したレビュー論文で、レンズ豆は「最も重要な豆類のひとつ」に位置づけられている。また同年、植物性食品を推進する米非営利団体「責任ある医療のための医師委員会(PCRM)」は、エンドウ豆のことを、タンパク質と食物繊維がたっぷりな「新たなパワーフード」と呼んでいる。

 そこで、エンドウ豆とレンズ豆の栄養や健康上の利点、おすすめの調理のしかたを紹介しよう。

植物性タンパク質、血糖値の改善、抗酸化物質

 エンドウ豆もレンズ豆も、大豆、ヒヨコ豆、ピーナッツなどと同じマメ科に属している。(参考記事:「体にいいナッツ5種、がんや認知機能などに効果、ベストはどれ?」

 マメ科の植物はどれも、根の中にいるバクテリアと互いに有益な関係を築くことで、大気中の窒素を地中に取り込んでいる。土に取り込まれた窒素は、マメ科の植物自体だけでなく、後でそこに植えられる作物の成長も促す。

 米国農務省(USDA)によると、米国人1人が1年間に食べるエンドウ豆とレンズ豆の量は、合わせて約2.1キロだという。これはビーン類の約3.4キロより少なく、また鶏肉と牛肉のそれぞれ約27キロという消費量に比べるとごくわずかだ(編注:厚生労働省の「令和5年国民健康・栄養調査」によると、日本人の1日1人あたりの豆類の摂取量は平均55.4グラムだが、そのうち大豆とその加工品を除く「その他の豆・加工品」は1グラムと2%にも満たない)。

 タンパク質が多く含まれているエンドウ豆やレンズ豆は、さまざまな肉料理と簡単に置き換えることができる。ゆでたレンズ豆100グラムには約11グラムのタンパク質が含まれる。これは厚労省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」が成人女性に推奨する1日の摂取量のおよそ5分の1に相当する。(参考記事:「タンパク質は実際どれだけ取るべき? 適量を知るのに必要なこと」

「植物由来のタンパク質を、人々はもっと多く取るべきです」と、米タフツ大学で栄養を研究するアンドレス・アーディソン・コラット氏は言う。

 氏らが2024年に学術誌「The American Journal of Clinical Nutrition」に発表した研究では、中年期にタンパク質、特に植物性タンパク質を多く摂取することが、高齢になってからの体の機能や心の健康の向上につながることが示されている。(参考記事:「驚くほど体にいい植物性タンパク質、おすすめの食材や食べ方は」

 また、エンドウ豆とレンズ豆はどちらも低GI食品だ。つまり「血糖値の急激な上昇を起こしにくい傾向にあります」とコラット氏は言う。