糖尿病リスクが129%増!ダイエット飲料が必ずしも「健康的な選択」とは限らない理由

ソース: Women’s Health / 画像:GETTY IMAGES /著者: Hannah Bradfield , 川畑 幸絵

HUIZENG HU//Getty Images

照りつける太陽の下で飲む、キンキンに冷えたダイエットコーラに勝るものはない。スカッと爽快で、通常のコーラよりもヘルシーな気がして、つい手が伸びてしまう。でも、この「気がする」という感覚こそがポイントで、実際には必ずしもそうとは限らない。『Current Developments in Nutrition』誌に掲載された大規模な最新の研究によると、ダイエット飲料およびサッカリン(人工甘味料)の摂取量が多い人は、糖尿病を発症するリスクが有意に高いことが明らかになった。

研究で明らかになったこと

人工甘味料は、これまでにも健康への悪影響が指摘されているが、今では多くのダイエット飲料に砂糖の代わりとして使われている。今回の研究では、そんな人工甘味料の摂取と糖尿病リスクの関連について調査が行われた。研究チームが分析したのは、1985年に始まり、当時の平均年齢が25歳だった成人4,654人を30年にわたって追跡した「若年成人の冠動脈リスク発達(CARDIA)」研究のデータ。参加者の食生活は、調査開始時、7年後、そして20年後に評価され、ダイエット飲料と人工甘味料の累積平均摂取量に基づいてグループ分けを行っている。

また、30年にわたる追跡期間中に糖尿病の発症状況もモニターし、最終的に691人が糖尿病と診断されたことを確認。詳細な統計解析の結果、ダイエット飲料を最も多く摂取していたグループは、最も少なかったグループに比べて糖尿病リスクがなんと129%も高いことが明らかになった。同様に、サッカリンの摂取量が多かった人も、少なかった人に比べて糖尿病リスクが110%高かったという。

この結果が意味すること

この研究結果は、少し悩ましい問題を突きつけている。砂糖の過剰摂取が健康リスクを伴うのは周知の事実だが、人工甘味料を摂り過ぎることにも同様のリスクが潜んでいる可能性を示しているからだ。

“より健康的な選択肢”として売られている製品が、実際にはそうでないとすれば、消費者に混乱を招くのも無理はない。糖分の健康への悪影響はすでに理解されているが、人工甘味料に関しては未だ不透明な部分が多いのが現状。研究者たちが指摘している通り、人工甘味料がグルコース代謝(体がエネルギーを作るためにグルコースをどう使うか)に与える長期的な影響を評価するには、さらなる研究が必要だとされている。また、この研究が観察研究である以上、飲料に含まれる他の添加物や、参加者の食生活全体がどこまで影響しているかを切り分けるのは難しい。

結局のところ、この研究結果から得られる教訓は、「バランスの重要性」。炭酸飲料を過剰に飲んだり、エネルギー源として頼りすぎたりしない限り、ダイエットコーラか通常のコーラのどちらを選んだとしても、長い目で見れば健康への影響はさほど大きくないと考えられている。

結論

今回の研究が示すように、人工甘味料の長期的な健康影響については、さらなる研究が必要とされている。人工甘味料に関する不透明な現状や、これまでの研究結果のばらつき、そして今回の新たな知見を踏まえると、特に炭酸飲料をたまにしか飲まない人にとっては、むしろ砂糖入りの飲み物のほうがいい選択になり得る。

とはいえ、私たちの社会は食べ物や飲み物に“健康的な優劣”をつけたがる傾向がある。でも実際のところ、大半の食べ物は「ほどほど」に楽しむ分には問題ない。どちらか一方が絶対に健康的、というほど単純な話ではないから。

国際甘味料協会(ISA)は次のように声明を発表している:

「低カロリー/ノンカロリー甘味料(LNCS)は、糖尿病を含む非感染性疾患のリスク軽減において、一定の役割を担っています。

この研究はLNCSの摂取が2型糖尿病のリスクを高めるという因果関係を示すものではありません。LNCSと糖尿病の関連を示唆する観察研究の多くは手法に限界があり、因果関係を確立することはできないのが実情です。例えば、こうした関連は“逆因果”による可能性も考えられます。つまり、すでに糖尿病のリスクが高い、あるいは糖尿病を患っている人が、食事管理の一環としてLNCSを選んでいる可能性もあるのです。

注目すべきは、低カロリー/ノンカロリー甘味料が血糖値やインスリン値に影響を与えないという主張を、多くの研究が支持している点です。こうした甘味料は、糖尿病を抱える人が炭水化物や糖分の摂取量を管理するうえで有用なツールとなっており、英国糖尿病学会、カナダ糖尿病学会、米国糖尿病協会などの主要な糖尿病団体も、広範な食事療法の一環として推奨しています。

重要なのは、低カロリー/ノンカロリー甘味料が、糖分の摂取を減らす手助けをし、糖尿病患者の食の選択肢を広げることで、公衆衛生の目標を支援できる点にあることです」

Text: Hannah Bradfield Translation : Yukie Kawabata