スポーツドリンクは歯の健康に影響するのか? 10代前半のサッカー選手52人の口腔状態を調査
ソース/SNDJ
スポーツドリンクが歯の健康に影響を及ぼす懸念を指摘する報告があるが、10代前半のエリートサッカー選手対象の横断研究ではそのような関連はみられず、ただし、スポーツドリンクの摂取は唾液のpHなどと有意な関連があるという結果が報告された。著者らは、歯の健康の予防策の一環として、この認識を高める必要性を指摘している。
アスリートにとって大切な「歯」を守る習慣は、子どものころに身に付く
アスリートにとって歯は、十分な食事を摂取するために重要であり、競技パフォーマンスの発揮のためにも重要と考えられている。一方でアスリートは、食事摂取頻度が高いこと、脱水による口渇などのために歯の健康が低下しやすいとされている。歯の健康を守るために最も重要なこことは日々のケアであり、競技開始年齢がより早い場合にはより早くからの適切なオーラルケアが必要と考えられる。
アスリートの歯に負の影響を及ぼすもう一つの因子として、スポーツドリンクの摂取を指摘する考え方もあり、複数の研究が行われてきている。しかし、スポーツドリンク以外のスポーツサプリ摂取の影響はあまり検討されておらず、とくにジュニアアスリートでの知見はより少ない。小児期に身に付いた生活習慣は成人後の長期にわたり引き継がれやすい。仮にジュニア期のアスリートにおい、スポーツドリンクやその他のサプリの摂取が歯の健康に関連しているのであれば、より徹底したケアが必要になる可能性がある。
今回紹介する論文の研究では、トルコの14~17歳のエリート男子サッカー選手を対象に、スポーツドリンクやスポーツサプリメントの使用状況と、歯の健康状態、唾液の性状の関連性が横断的に調査された。
若年者では歯の状態に有意差は来していないが、唾液pHに有意差
研究参加者はイスタンブールにある、プロサッカーリーグのU14~U17のアカデミーから募集された。過去半年以上、アカデミーの現役メンバーであることを適格条件とした。統計学的検討から必要なサンプルサイズは50と計算され、59人がスクリーニングを受けた。このうち7人がデータ欠落などのために除外され、解析対象は52人だった。
歯の健康状態は、検者間のバイアスを除外するため1名の歯科医師によって評価された。また、評価のタイミングは、夕方の通常のトレーニングセッションの直前であり、曜日と時間帯を全対象で一致させ、評価の2時間以上前から固形の食物の摂取を禁止した。
解析対象者のおもな特徴は、年齢14.4±1.34歳で、トレーニング頻度は週3.3±0.5日であり、タバコ/ニコチン使用者は含まれていなかった。
サプリの利用状況:利用率は3割で、多くは自分自身の判断で使用
サプリの使用者は16人(30.8%)で、摂取している割合が高いサプリは、スポーツドリンク(17.3%)、スポーツバー(17.3%)、ビタミンC(13.5%)、オメガ3(11.5%)、マルチビタミン(7.7%)、鉄(7.7%)、ビタミンD(7.7%)、カフェイン(5.8%)、マグネシウム(5.8%)などだった。
サプリ使用の目的は、スポーツパフォーマンスの向上(n=18)、健康の維持(n=11)であり、サプリ使用の決定は、自分自身(n=12)またはコーチ/トレーナーの指導(n=6)によるものだった。
歯の健康状態と唾液の性状:40.4%が歯の浸食あり
治療された歯や失われた歯も含む齲歯(虫歯)の数を表すDMFTスコアは4.31±3.17であった。このほか、歯の浸食や摩耗の指標(VEDE、BEWE)から、40.4%が浸食やびらんありと判定された。
唾液のpHは安静時が6.85±0.266、刺激により分泌される唾液の量は9.36±3.58mL、そのpHは7.33±0.296、唾液緩衝能のスコア(酸を中和してpHの低下を抑える強さ)は7.17±1.70だった。
サプリの使用と歯の健康状態の関係:有意な関連なし
スポーツサプリを利用している選手と利用していない選手で、DMFTスコアを比較すると、同順に5.00±3.25、4.00±5.5であり、有意差はなかった。また、スポーツドリンク、スポーツバー、ビタミンCなど、個々の食品やサプリの使用の有無で二分したうえで比較しても、DMFTスコアはすべて有意差がなかった。
次に、スポーツサプリを利用している選手と利用していない選手で、歯の浸食が認められる割合をオッズ比としてみると、0.508(95%CI;0.14~1.76)で有意な関連はみられなかった。また、スポーツドリンク、スポーツバー、ビタミンCなど、個々の食品やサプリの使用の有無で二分したうえでの検討でも、すべて有意な関連はみられなかった。
サプリの使用と唾液の性状の関係:スポーツドリンク摂取習慣が唾液pHの低下と関連
続いて、スポーツサプリを利用している選手と利用していない選手で、唾液の性状を比較すると、スポーツドリンクを除くサプリの使用の有無では、安静時の唾液および刺激により分泌される唾液のpHに有意差はなかった。
一方、スポーツドリンクの使用の有無では有意差が観察され、以下のように、スポーツドリンク摂取習慣のある選手の唾液のpHのほうが低かった。安静時はスポーツドリンク摂取習慣なし群が6.80±0.40、習慣あり群が6.60±0.20(p=0.026)、刺激により分泌される唾液では同順に7.40±0.40、7.00±0.45(p=0.015)。
ジュニアアスリートのスポーツドリンク使用と歯の健康に関する意識向上を
論文の結論は以下のようにまとめられている。
「本コホートでは、探索的な非調整解析において、スポーツドリンクの摂取は唾液pHなどの唾液パラメータと関連していた。これらの結果は、スポーツドリンクの摂取によって唾液の変化を示唆する可能性があるが、本サンプルではDMFTや歯のびらんに関する臨床的な差異は認められなかった。よって、若年アスリートにおけるスポーツドリンクの使用に関しては、予防策としての意識を高めるべきである」。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Sports supplement consumption, dental health, and salivary parameters in adolescent elite football players: A cross-sectional study」。〔BMC Oral Health. 2026 Jul 8;26(1):1543〕
原文はこちら(Springer Nature)